私が医療と福祉の分野に携わるようになって7年が経とうとしています。僕がこの世界に入ってきた時には介護も障害もある程度サービスは整っていました。生活保護もあり所得補償も国がしてくれる。行き倒れることはない。そんな風にはじめは呑気に考えていたものです。
しかしながらこの国の医療と福祉は充実しているんでしょうか。予算(お金)の面だけ見れば、兆単位のお金が動いており、アジアやヨーロッパの小国はそれだけで国家予算に匹敵します。でも何か変だ。何が変なのか?ここが始めの数年は良く分からないものの、違和感だけが心身の残る日々でした。今は、零細企業ですが会社を立ち上げ、障害者の方と日々仕事を通して自立をするお手伝いをしています。その中で、この変だ、という感覚が言葉に表せるようになってきました。それを言葉にしていこうと思います。
ただ前もって言いたい事があります。各分野で日々働いている方達は一生懸命やっている方も少なくない。合成の誤謬というか、まとまると違う方向に行ってしまっている、ということです。
医療に関していうと、医療全般がおかしいと思いますが、精神医療は悲惨な状況です。簡単に言えば、薬物治療が大手を振っている状況が悲惨なのです。薬は患者の治癒を補助するものであり、薬自体が病気を治してくれるわけではありません。心のことであればなおさらです。私の身近な方に抗てんかん薬を躁病のための気分安定薬として数年間飲み続けている方がいます。彼は一向に気分が上がらない。飲み続けている意味はあるのかを悩んでいます。答えを言えば、必要ない、です。僕は彼に言いました。医者に問いかけてみれば良い。「一向に気分が安定しないが、いつになったら気分安定薬で気分が安定するんですか?」と。気分が安定するとはどういう意味なのか?気分は常に不安定です。一つとして同じときはない。全員不安定です。そんな気分の不安定さを病的に捉えれば、全員服薬しなければいけません。
また、別の方は医者に「僕の出来ることは薬を出すことくらいしかできない」と言われたそうです。それは自分の無能さを認めてしまったことになります。そうであれば心理士やソーシャルワーカーに薬を処方できる権限を与えれば良い。薬物治療のみを治療と考えているのであれば、医師免許を返上すべきです。心の問題は、そのきっかけになったであろう事象に向き合い、乗り越えていくことのみが解決へと繋がります。どのような精神療法であったにせよ、最終的にはそこを自身で処理することが避けては通れません。その際に起こる葛藤などが抑えきれない、耐えられない位苦しいのであれば、向精神薬を飲めば良いのです。薬など所詮その程度の存在、役割だと理解しておけば、薬に何とかしてもらう希望は持たなくて良いのだろうと考えます。
福祉も悲惨です。自戒を込めて書きますが、現状の福祉は、医療のお墨付きをもらわずしてお客さんももらえません。医療を無批判に信じ、薬をキチンと飲まないのはあり得ない、先生の言うことは聞かなければいけないと刷り込まれている方が何と多いことか。それが行動に出ます。薬を飲まない場合に、なぜ飲まないのかと詰め寄り、なぜ薬を飲みたくないのかを聞こうともしない、飲むよう圧力をかける等を施設でしていないでしょうか。
そして、地域差はあるのかもしれませんが、精神病院からは福祉へ積極的に患者さんが流れる仕組みになっていません。精神科医は福祉の現状を知らず、福祉が何が出来るのか?不信がっていると。福祉は医療領域は踏み込んでいけないものだと自身をマインドコントロールさせている始末。医療から福祉への流れが滞っていると、福祉の事業所は利用者を積極的に外へ出していく、次のステップへ行かせられません。福祉はいまや経営を考えずにはいられないからです。1日利用者がくればいくら入ってくる。だから嫌がっていても何度も電話したり、家先まで迎えに行ったり一生懸命です。彼ら当事者が日中活動する内容よりも、彼らがとにかく出席することに腐心します。手段の目的化とも言えるでしょうか。本来は彼らが目的を達成するために作業所なら作業所に来るのですが、目的が作業所に来ることになる。
そろそろ真面目に医療・福祉をやりませんか?というのはこうした、よどんだ流れを変えようと言っています。これは僕が2018年に下呂市内で行っている重要項目ですが、医療と福祉の対話を増やすことです。病院の医師と福祉側が話をする。お互いに何が出来て、何が出来ないかを把握する。医療側は、薬漬けにし、囲っておく必要の無い患者は、どんどん福祉に出していく。福祉はそれに応え、積極的に次のステップへ行けるよう、具体的な就労訓練や、自立への仕事を身に付ける。この流れが出来れば、医療と福祉を信用する方も増えてきます。精神病院の売り上げは確実に下がります。ただし、限られたマンパワーを存分に生かすことのできる、つまり急性期の精神医療への対応が充実する。これは重要です。そして、混乱期を過ぎればすぐに退院、福祉または社会へ。
医療・福祉。そろそろ真面目にやっていきませんか。上記の仕組みに変えていくことで、現場にいる職員のモチベーションも上がり、生活の水準も上がる。患者も嬉しい、職員も嬉しい。一挙両得です。
くどいようですがもう一度言います。そろそろ真面目に医療・福祉に取り組みませんか?