高齢障害者問題について

2017年は今回のテーマである高齢障害者の問題について取り組んでいくつもりだ。まず話を進めていく上で高齢障害者とは何か、という定義から説明していく必要がある。高齢障害者とは

 

「心身に障害を持つ65歳以上の男女」を指す。

 

65歳で区切られている理由は介護保険で65歳以上からサービスが受けられるためだ。障害者サービスは18歳以上から受けることが出来る。知的障害者の例を挙げると、中重度の知的障害を持つ方であれば現在は特別支援学校へ行くことが多い。特別支援学校とは障害を持つ18歳以下の子供たちが学ぶ学校である。文部科学省の平成26年5月1日のデータ(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/002.htm)によれば特別支援学校の総数は1096校ある。そこで小・中・高等学校合わせて約13.5万人が学んでいる。同じく同時期のデータ(http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/002/002b/1356065.htm)で通常の小・中・高等学校36000校に対し約1350万人が学んでいる。ちょうど一般の学校の1%くらいの生徒が特別支援学校に通っている計算になる。

 

特別支援学校を卒業すると彼らは各々の能力、希望に応じ進路を選択していく。一般事業所への就職を決める子もいれば福祉就労と言われる場に行く子もいる。一般的に以下の順に進路を決めていく。

 

一般事業所(普通の就職)

↓ むずかしければ

就労移行支援事業所(最大2年間一般事業所へ就職するために訓練する場)

↓ むずかしければ

就労継続支援A型事業所(最低賃金をもらえるが仕事はそれなりにすることを求められる)

↓ むずかしければ

就労継続支援B型事業所(最低賃金ではなく工賃をもらえる。ただ月に1万円前後)

↓ むずかしければ

生活介護(障がいが重く働けないが少しでも身体を動かす機会が欲しい方)

 

という感じだ。

上記は日中の活動だが、障害者サービスは現在、日中のサービスと夜間のサービスに分けられている。夜間のサービスは以下

 

・グループホーム(ある程度自分で生活する能力が求められる)

・施設入所支援(常時介助が必要な方が入る場)

 

である。この2つは障害者にとっての「家」である。そのため日中のサービスには家、ないし施設から通うことになる。

実はこのような形態になったのはごく最近で、2003年の支援費制度に遡る。この時に初めて障害者が選ぶことが出来る制度となった。それまでは行政がタクトを振る措置制度であった。障害者本人に行き場所を選べなかったのだ。これは2000年に始まった介護保険制度も同様だった。

 

さて本題に入るが、今、全国的に課題(とうの昔にこのような課題が出てくることは分かり切っていたが行政、事業者、障害者を取り巻く資源はそれに面と向かって取り組んでこなかった)になりつつある高齢障害者問題とは何か?

 

それは措置制度の時代に入居している障害者の方の高齢化である。知的障害者に限ると施設は1961年に12施設出来たのを皮切りに少し古いデータだが平成16年には4000施設を超えている。

入所施設は一度入ると退去することが少ない。なぜならば健常者と言われる者のように学業、仕事などで移り住むことが出来る訳ではないからだ。そのため施設の出来た年が早ければ早いほど高齢障害者問題に直面している。

私の地域の中重度障害者が住む施設は1986年に出来た。その時日本の平均年齢は35歳だった。つまりその時に入所した障害者の平均年齢を出すとだいたい35歳前後だと考えられる。すると極端な話、誰も退所せずにきているとすると、昨年2016年に65歳となっている。勿論これはあり得ない話だが、そこの施設の平均年齢は約62歳だそうだ。途中で幾人かは変わったかもしれないがそれほど推測と違わない。

 

高齢障害者が個人的にも課題であると言える点は次の3点に集約できる。

 

①障害者施設は障害者の介助は熟練しているが加齢により出てくる介護になれている訳ではない

②障害者の方は年齢の割に早老の方が多い

③地域の若い中重度の障害者が施設に入れない

 

①に関して、障害者施設は障害者施設であるため、加齢特有のADLの低下、認知レベルの低下に十分対応できるかと言われれば必ずしも長けている訳ではない。障害者施設と高齢者施設はケアの仕方が違う。当たり前だと私は思うが、これは実際に双方の施設で働いたものとしての実感だ。

②に関して、障害を持つ方は50歳の壁があるように思う。実際に50歳を超えてくると心身の衰えが著名になるデータもある。これも私の実感である。

③が一番の問題かもしれない。世代を問わず、障害を持つ方は一定の率で生まれてくる。65歳を超えていれば高齢障害者は行く施設があるが、若い障害者は障害者施設に入れなければ高齢者施設には絶対に入ることが出来ない。少なくとも40歳を超え特定疾病(http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo3.html)でもない限り65歳からしか施設には入れない。家で看ることが困難な障害者は少なからずいる。そうした方こそ施設で看てもらうべきだと私は思う。

 

では高齢障害者は高齢者施設に円滑に移行できるのか?これが難しいみたいだ。地域のある例だと、知的障害者施設に入所中の方が高齢者施設へ移る準備をし始めていた。しかし障害者施設にいると介護保険の認定調査が入れないそうだ。老人福祉法下の介護保険施設(介護老人福祉施設〈通称特養〉、介護老人保健施設〈通称老健〉、介護型医療療養施設)は要介護がつかないと入れない(つまり軽度の要支援では入れない)。しかし認定調査が受けられない。そこでどうしたかというと、近隣の精神科病院へ社会的入院をし、そこで要介護認定を行い施設に入った。

ただ、そこが老健だったが、介護者の不慣れや、種々の困難さより1か月で退所させられてしまったのだ。元の場所に結局戻り生活されている。

 

我々はこの高齢障害者問題をどのように考えていけばいいのだろうか?私は元居た障害者施設の職員が高齢者施設を立ち上げることが1つの解だと考えている。またそれを下呂市内で立ち上げる予定だ。障害特性を知っている元職員が高齢者施設に移行し、そこで介護をする。知った顔であれば障害者本人も安心するし、元々障害者事業所で介助を行ってきた技術に加え、高齢者への介護も身に付けることでハイブリッドなケアが出来る。

終身、見取りまで彼らが彼らの時間軸で希望を持って日々を過ごしていけるのであれば高齢障害者問題は問題ではなくなるだろう。