これは今週、僕が体験したことに基づく報告である。
現在、僕は下呂市の山奥で自給農業を主とした障害者就労支援事業を行っている。その中で統合失調症の方と一緒に住んでいるのだが、昨日夜に異変が生じた。
目が血走っており、切実にこう訴えてきたのである。
「震えが止まらないんです」
震えは寒さから来るものではないようだ。体温も平熱で顔が紅潮する様子もない。本人から「入院させてほしい」と何度も訴えがある。主症状は①手足の震え②呼吸困難感(息を吸い続けなければ息が止まるような感じがする)③便はしたいけれどトイレに行っても出ない、でも出そう、の3つだった。もう辛くてたまらないのだろう。1分おきにトイレに行き、その都度上記のように訴える。結果、本人がとにかく病院へということで市内唯一の救急病院へ行く。救急外来で血液検査、胸のレントゲンを撮るものの結果は異状なし。内科的な所見はOKということだ。本人へ、かかりつけのG市民病院へ明日かかろうと言っても聞く耳を持たなかった。
一度家へ戻ったが、ベッドへ行っても3分後に「震えが止まりません。病院にかかります」というのをひたすら繰り返す。そこで精神科救急はやってないと思ったがG市民病院へ電話をする。救急外来の看護師に事情を説明すると、明日予約をとって来てほしいと。就寝前のデパスを飲めば何とかなるだろうとの返答だった。本人へ説明し、何とかその後起きてくることはその日はなかった。
次の日、本人が僕が起きたのを見計らって「病院へ行きます」と。朝、病院へ予約を取るので待ってほしいと。症状は昨日より落ち着いたが、まだ駄目だから行きたいと。しかし予約の電話をするも本日は休診。しまった、予定表を見るのを忘れていた。事務のお姉さんは明日予約を取ってきてくださいと。事務のお姉さんに期待するのは酷だが、市民病院へかかりたいのは急を要する場合が多いはずだ。何とも事務的な対応に辟易する。
本人へその旨伝えると、もう頼むから助けてくれという目をしんばかりに、「とにかく病院へかかりたい」と。市内の精神科病院ははっきり言ってヤブ医者だ。ロクに話を聞かずに適当に薬を処方しているようにしか素人目でも見えない。根拠がない(血液データなど客観的なデータに基づくもの出ない上に話を聞かない!)医療である。EBM(Evidence Based Medicine:つまり証拠に基づく医療)ではなくLEBM(Little Evidence Based Medicine:少しも証拠に基づかない医療)だ。それでも本人にはそうした病院で長期入院になる可能性があるが、それでもその病院へG市民病院より先にかかるか?と話すと「やむを得ない」と。そこで市内の精神科病院へ行く。
そこで医師からは前回G市民病院で抜いたアーテン(抗パーキンソン病薬)が原因だろうと。僕もその推測を立てていた。パーキンソン病治療薬はパーキンソン病の主症状である震戦(ふるえ)、仮面様顔貌(表情の乏しさ)、小刻み歩行に効果があるとのことだ。それを元に戻そうと。結局、前回から減薬を試みたが元に戻ってしまった。
昼食を食べ、アーテンを飲む。昼過ぎには効いてきたのか、震えが収まってきたと本人より。するとG市民病院の看護師より電話があり、大丈夫か?と。夕方診察出来るので遠方だが来ますか?との問いに本人へ聞くと行きたいと。急遽、G市民病院へ。主治医と話をしたことでは、やはり切った薬が効果が抜けたタイミングで症状として現れてきたのだろうと。今まで何十年も同じ薬を飲んでおり、身体が順応していた、薬を飲みまくって色々な症状が出ていたが、ある種均衡がとれていた。それが薬を抜いたことでバランスが崩れ離脱症状として出てきたのだと思うと。自分の考えていた線とほぼ同じ結論ではあった。
今回の一連のことから学んだ(感じた)ことは、薬の強烈な作用だ。震えが止まらなかった彼だが、昼食後に飲んだ薬でほぼ止まった。舌が上あごにトントンとあたり震えると想像できない不随意運動に苦しめられていたが、それが無くなった・・・しかし無くなったからそれで良かったのではなく、僕が言いたいのはそうした強烈な副作用が生じる薬の作用だ。薬剤会社は期待していた効果は作用と言い、望ましくない効果には副作用と使い分けているが、そんなことはない。あたかも期待していた効果が出るための薬で副作用はまれに起こるなどと謳っているが、薬に期待できる効果に作用も副作用もない。必ず作用も副作用も起こる。それが症状として出てくるのが人によるという話なだけだ。
薬とは人間のホメオスタシス(恒常性維持機能)を惑わし、人間のリカバリーを妨げる毒に他ならない。ホメオスタシスとは人間が人間でいつづけるために現れる反応を指す。例えば風邪を引いて体温が上がるのは、病原菌を抑制、病原菌と戦う白血球の働きを活性化させるためだし、腐った食べ物を食べれば、下痢を起こし、早く食べ物を排泄しようとする。
ご存知の通り、風邪薬と下痢止めはこれに逆らう働きをする。風邪薬を飲めば体温は下がるが、菌は繁殖しやすくなり、根本的に免疫力が上がった訳でないので菌の大群に結果として負けることになるし、下痢を止めることは体内に悪い物を留まらせるので逆に悪影響が出るといった具合だ。ホメオスタシスが発揮されれば身の回りに起こるほとんどの症状が改善されていくと自分でもはっきりと実感している。今の仕事になり、しんどいときには寝る。熱がありそうな時は布団にくるまってご飯も食べたくないなら食べない。それで治る。
向精神薬に関しても、フルニトラゼパムという薬の情報(http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se11/se1124008.html)を見てもらうと、不安な気持ちを和らげる一方、震え、眠気、頭痛、呼吸困難感、口渇、ふらつき、めまい、興奮などなど。めったに起きないと書いてあるが、副作用に対する薬を処方して蓋をしているため(だから日本の処方は多剤処方になる)だろう。副作用は出ている。
主治医とは長い期間をかけて減薬していこうということで現状維持に戻った訳だが、観察者の立場から改めて薬の恐ろしさを実感した1週間だった。薬を絶対飲むべきではない!とは言えない。僕もロキソニンなど頭がどうしても痛い時に飲むからだ。でも依存するべきではない。
医者(特に精神科医)は減薬などし、症状が出た場合には飲まないから症状が出たのだと言う。でも飲んでいない時に全く出ていなかった症状が今出ていることに関しどう考えるのか?もっと言うと薬に頼るきっかけとなった症状は薬でしか良くならなかったのか?別の道が無かったのか?ここで別の選択肢を提示できる社会になれば、こうして彼のように苦しむ人が減るはずだ。勿論、別の苦しみが襲ってくるかもしれない(例えば薬で見ようとしなかった現実・現状が見えてくる苦しさ)。どちらの苦しさがマシだろうか。いや、どちらの苦しさの先に光が見えるのかを良く考えられるようにサポートしていくのが自分の仕事だと思う。
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溝呂木 (水曜日, 09 11月 2016 22:14)
ブログ記事を拝読させて頂きました。
向精神薬の危険性について、大いに賛同致します。
一般に多くの精神科医は、薬の減らし方や加減が、分からないのではないかと思います。
私の体験談を、精神科医療の問題点を取材されているフリーライターの方に、記事にして頂きました。
ちょっと長いので、ザッと見てみて、もし参考になりそうなら。
http://ameblo.jp/momo-kako/entry-11389949938.html
http://ameblo.jp/momo-kako/entry-11389953017.html